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2008年度 努力賞受賞 | これまでの受賞者

日刊工業新聞社主催 フレッシャーズ産業論文コンクール
努力賞受賞
人の満足を生む企業へ ~“創る絆”と“繋ぐ想い”~

ヤマハモーターソリューション株式会社
川上 栄介

「人との繋がりを大切にしてほしい。」これは内定者交流会で先輩社員の方々から数々のお言葉を頂いた中、私の心に最も響いた言葉である。しかし、当時の私にはよく意味がわからなかった。ITといえばただひたすらにパソコンをいじっていて尚且つ暗く、コミュニケーションツール=メールというイメージが強かったからだ。今のIT会社に入社を決めた理由は、私の持つイメージを見事に覆された驚きという意外性が大きな割合を占めている。事実このIT会社には明るくてユーモアのある方が多く和気藹々としている。そこに興味と魅力を抱きながら私の社会人生活は始まった。

入社して4カ月、社会人としての基礎研修やグループ会社であるA社での1カ月間に及ぶ船外機組立実習をこなし、現在は専門的なITスキル研修を受けている。偶然にも私は入社する1カ月程前に、南の小さな島国でA社の船外機を搭載したボートに乗りスキューバダイビングを楽しんでいた。この短い期間で使う側の立場と作る側の立場の両方を経験できたのだ。船外機所有者にA社の製品はどうかと問いかけたところ「スバラシイヨ!」「コワレナイ!」と元気に片言の日本語で答えてくれたのを覚えている。それは、この上なく嬉しくて温かみのある言葉だった。やはり使う側としては、島国なので修理部品が届きにくい事や、海上での故障が大きな不安要因であるが、彼のA社に対する信頼は絶大であった。だからこそ安心して楽しめる。あの日、私は日本から遠く離れた場所でお客様満足(CS)の実態を目の当たりにしていた。

船外機組立実習では、自分のミスでラインを止めないようにと、ボルト一つ止める事にも全身全霊を込めていたのだが、毎日同じ作業を何百と繰り返していく内に、体が仕事を覚え気も緩み出し、「自分一人の小さなミス位いいだろう。」と安易な考えになりかけていた。しかし、あの日ボートに乗り合わせた人達の事を思い出すと、絶対的な信頼を裏切れないという気持ちに駆られ、彼等の笑顔に少なからず自分の仕事が関わっている事を認識できるようになった。私はCSを実現させる為の大事なプロセスの一角を担っているのだ。

船外機を作りお客様に届け満足して頂くまでには、私の想像を遥かに超えるプロセスが存在する。マーケティングに始まり、企画・設計・生産などを経て販売やアフターサービスに至るまでの内、私が担当したのは組立のほんの一部分であるが、そこで私が杜撰な仕事をしてしまっては、ここまでの全てのプロセスが台無しになってしまう。自分がモノづくりに携わる以上、少なくとも自分が作ったモノには満足して欲しいし、大切に扱って欲しいと願うのは皆同じではないだろうか。モノづくりをするという事は、お客様の喜ぶ顔を見るのが一番の喜びだと私は考えている。前工程の人がそうやって繋いできてくれたモノを私も同じ気持ちで後工程へと繋いでいかなくてはならない。

全てのプロセスを一つのチームとした時に、チームの全員がCSという目的を明確にし、共有する必要がある。チームでどんなに良いと思える商品を作っても、肝心のお客様に喜んでもらわねば意味がないからだ。CSを実現してこそ、「プロセスに関わる人の継続的な満足」も生まれるはずだ。

2008年版の労働経済白書では、仕事満足度低下による成果主義の運用見直しが指摘された。ではなぜ、仕事にやりがいを見失ってしまったのだろうか。それは目的とするものを「人」ではなく目先の数値やモノとしてしまった事に原因があると考えられる。割付けられた数値目標を達成するだけでは、「人の満足」は得られないという事だ。目の前の仕事を上手に処理するだけでなく、目には見えなくても人と人とが繋がっている意識を持つ事が必要だ。

「人との繋がりを大切にする」それはIT業界に限らず、すべての業種に言える事だ。今後、私は企業のプロセスを支える信頼性の高いシステムの開発・運用をする立場からモノ作りに関わっていく事になる。先ずは隣の人、そしてチームの人、会社の人、関係会社の人、お客様へと一歩ずつ一人ずつ絆を創り、想いや知識、人脈を共有していきたい。その為には、自分の想いを自由活発に討論できる明るい職場の雰囲気作りが必要となる。

実現に向ける私の始めの一歩は、国籍や性別を問わず人に礼を尽くす事だ。先ずは大きな声での「あいさつ」を実践し、小さな一歩だが、特に感謝の一声は大切にしていきたい。また国が違う場合には、たとえ片言でもその人の国の言葉で「あいさつ」を実践してみたい。そして、世界の人に向け信頼性の高い仕事をする為にも豊かな人間関係を持てる人に成長して行きたい。

(注)参考文献
2008年版「労働経済白書」
発行:厚生労働省
発行日:2008年7月22日



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