
ヤマハモーターソリューション株式会社
田中 一範
「仕事を楽しんでいますか。」この質問にあなたはどう答えるだろうか。自分の将来像として描いていた仕事に就けたから楽しいという人もいれば、仕事は生活のため、または趣味を続けるためのお金稼ぎだから楽しくなくていいという人もいるだろう。仕事に対する楽しみを感じる瞬間は人によって違うと思う。仕事を楽しめている人とそうでない人の違いは何なのだろうか。
仕事という言葉から「大変」、「つらい」という事を思い浮かべる人や「やりがい」、もしかしたら「生きがい」なんて言葉を連想する人もいるだろう。私はこれらの言葉は仕事の「楽しさ」というところに繋がると考えている。
先に断っておくが私が言いたい楽しさとは、仕事が楽で感じられる楽しさとは異なるものである。社員が同じ目標に向け、同じ気持ちで向かっていく一体感を感じられる楽しさであり、逆境に立たされてもそれをリカバーしようとする意欲から生まれる楽しさである。つまり、仕事に対する情熱から変化したものである。仕事を楽しいと感じられる人とそうでない人の違いは、この部分にあると私は考える。
私は学生時代にアパレルメーカーでアルバイトをしていた。その職場はとても活気のあるところで、お客様が買い物をしやすい環境を提供するために、売り場のレイアウトやディスプレイとして飾る商品などについて社員だけでなく私達アルバイトにも意見を求め、また、こちらも発信できる環境が作られているところであった。
私は、こんなにも一人ひとりが自ら進んで働いている環境にある職場を、ここにアルバイトに来るまで体感した事はなかった。なぜこんなにも一生懸命になれるのだろうかと思い、始めの頃社員の方にこの疑問をぶつけた事があった。その答えは売上をとることはもちろん企業として大事だが、お客様が言ってくれたありがとうの一言がうれしいからという事だった。この方は、実際に顧客満足のために先頭を切って活動をしている方で、その後功績が認められ表彰を受ける事となった。
私はこのような環境の中で働かせていただき、キャリアを積み重ねていく中で、仕事に対して今まで上司の意見を聞き、それに従って頑張らなければと肩肘張っていた意識が、仕事を楽しもう、お客様のために頑張ろうという自発的な意識に変えていく事ができた。このように、仕事を楽しもうという意識の連鎖が、私の働いていた職場の根本にはあった気がする。
仕事を単に金銭的な楽しみとしてだけでなく、自発的に仕事をする事を楽しめる内発的動機付けは、自分から次の仕事を求め次々と経験を積もうとする原動力になる。その結果が個人の成長を促すことに繋がるのだ。そして個人の成長は会社を継続的に存続させるには必要不可欠なものであり、これが企業を成長させる要素だと私は考える。
私は新入社員として今まで様々な研修を受けてきた。その中で船外機を組み立てる工場実習が1カ月間カリキュラムとして組み込まれていた。私達の会社はIT会社なので船外機の組み立ての様な仕事はないのだが、システムを提供する会社の一員として、システムを実際に利用する現場で働く事で、その雰囲気を肌で体感させて頂くことができた。
この研修から、働いている人に今以上に効率のよい作業環境を提供するシステムを構築するのが私達の仕事であることを認識すると同時に、私達の仕事の重要性が理解できた。この体験で得られたものは、私自身の財産となり、業務において学んだ事が企業に還元されていくと感じる。
仕事をするとお金は手に入る。しかし、仕事の楽しさはただ働いているだけでは手に入らない。個人が自分から自発的に仕事に取り組もうとする姿勢と、その取り組みを受け入れる企業の二つがあって成り立つものである。
戦国の武将、武田信玄の有名な言葉に「人は城、人は石垣、人は堀。」というものがある。どんなに立派な城や石垣や堀があっても、人がいなければどうにもならないという意味だ。企業も同じで成長するためには人材が必要である。しかし、資源である人材を集めたとしてもそれを育てなければ意味がない。そのためには内発的動機付けを促し、自ら仕事を積極的にこなすようにさせる事が大切である。これが人材を成長させるために一番確実な方法なのだ。
よって仕事を楽しめるという事は自らを成長させる一番の原動力であると共に、企業を成長させる原動力ともなると言える。仕事を楽しもう。これこそが企業が成長するためには欠かせない内発的動機付けの要因であるのだ。
(注)参考文献
藤本隆宏(2007)『ものづくり経営学』光文社新書P,51~P,63