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2006年度 第1席受賞 | これまでの受賞者

日刊工業新聞社主催 フレッシュマン産業論文コンクール
第1席受賞
人間にも企業にも求められているものは「誠実さ」

ヤマハモーターソリューション株式会社
鈴木 淑子

2005年4月13日午後4時 私の携帯が鳴った。携帯の画面にはIT社名が表示されている。「あなたを内定致しましたのでご連絡致します。」嬉しい言葉だった。このIT社に出会ったのは、パシフィコ横浜で開催された合同企業説明会だった。大学では教育関係を勉強していたのでIT業界は全く就職活動の視野には入っていなかった。しかし、私は幾つかの選択肢からこのIT会社に就職することに決めた。その理由は「コミュニケーションができればITのことは知らなくても大丈夫だよ。」という言葉をもらったからだった。

一般的にどの会社も採用においては、その会社の募集している部署にとって関係のある学部学科を卒業する学生を採用しようとする。ましてやITとなれば、ITを知らない私のような新人を採用すれば一から始めなければならない。これは会社にとって時間やお金が掛かり大変なことである。当社が何故そのような採用方針をとっているのか解からないと共に「私もやっていけるかな?」と不安もあったが、この言葉に励まされて入社した。

入社して4~5月は社会人や会社についての基礎研修、6月はA社での船外機組み立て実習、そして7月に配属されてから初めて専門の研修に入った。そして、これまでの研修を通して会社は私達に「誠実さ」を求めているのではないかと思うようになった。土台となる「誠実さ」の上に誰とでも話せる「コミュニケーション力」、さらにその上に「専門知識・技術」があるのではないかと理解するようになった。

それはA社での船外機の組み立て実習の時に始まる。作業を行うにあたり、毎日の計画が工数で計算され設定されている。専門知識・技術があってこそ計画を守ることができるが、初心者である私がその工数で行うことは厳しい。しかし、工数を守る以上に、水上での人命を預かる船外機では品質を徹底して守らなければならない。「まぁいいや。」という考えが不良品を出し、会社の信用低下に繋がるということだ。この時に大事なことは、もし製品に傷をつけてしまったり、部品が少しでもおかしいと感じたなら正直に上司に伝え、おかしいと思った時点で止めることである。このように不良品を見つける姿勢を持ち、不良品は次工程に流さないと個人個人が意識し、目の前の問題から逃げない「誠実さ」が大切だと痛感した。

おかしいと思ったその思いを仲間や上司と忠実にコミュニケーションがとれる雰囲気、伝えようとする姿勢が「誠実さ」に繋がると考える。

そして今、「誠実さ」が求められているのは個人だけではない。
最近では「CSR」「トリプルボトムライン」「コンプライアンス」の考えが普及してきている。その背景には不祥事の問題がある。現にパロマの事故、雪印の食中毒事件など、ひとつの不祥事がその会社の存続を危うくしてしまっている。ではなぜ不祥事が起こってしまうのだろうか。それは企業、個人が目先の利益や競争に走り「誠実さ」に欠けていることが考えられる。また人の安全よりも自分の身、会社の身を守りたいという気持ちの大きな現れのように感じる。不祥事が露わになることはステークホルダーの信頼を失い会社の価値ブランドを下げ、経営を危うくしてしまう。個人にも企業にも今、「誠実さ」が求められている。

私はこれらの経験から「誠実さ」と「コミュニケーション力」を身につけ、土台を固めることが先ずは必要であると考える。これからは専門知識・技術を身につけてプログラムを設計したり作成したりするようになるが、そこでも「これでいいかな。」などと勝手に判断せずより良いものを作る姿勢を持ちたい。そして解からないことは解からないと言ったり、様々な人に聞くことでコミュニケーションを取ることを実践していきたい。

また、私が今の部署に配属されたときにグループリーダに言われた言葉がある。それは「会議に出たら必ず発言する。」ということである。これからは社員であるという自覚、何かを見つけようという姿勢を形成し、コミュニケーションを取ろうという姿勢を持つことが大切だと考える。

配属されてから1カ月が経ち、全く分からなかった状況から今ではプログラム言語などを理解できるようになってきた。昨日よりも今日と少しずつ着実に進歩していきたい。そして小さな「誠実さ」を積み重ねて大きな信頼を得ていきたい。

中庸に 『誠は手段でもなく方法でもなく、道徳の根本なのだ。よき人間となる原動力である。』という言葉がある。
企業も個人も「誠実さ」が求められている。
何が善であるのか見極める力が求められているのだ。

(注)参考文献
マンガ孟子・大学・中庸の思想
蔡志忠 ・作画
和田武司・訳
野末陳平・監修
講談社+α文庫



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