
ヤマハモーターソリューション株式会社
内田 徹
高校時代、私は吹奏楽部に所属していた。男女合わせて約70人ほどだっただろうか、それまで付き合いを持たないようなタイプの人間も多く様々な経験ができた。
吹奏楽部というものは、基本的に部員全員に役割(楽器)が与えられ、そのそれぞれが自分の役割を確実にこなしていくことでひとつの音楽を完成させる。そんな吹奏楽と中小企業における企業活動には、いくつかの共通点があると私は考える。私はそのなかで特に、強い高校に見られるいくつかの特徴から、力のあるチームについて考え、企業活動に重ねる事で、中小企業の将来あるべき姿、また、これから取り組むべき事について考える。まずは、指導者に着目する。部活動を指導する立場の人間は、その高校によって様々ではあるが、強い高校の指導者に共通して言えることは、現状をよく把握しているということだ。強い高校の指導者は現在の部活動の状況から、全体のバランス、さらには各個人の長短までを的確に把握している。それは、普段の練習などで各メンバーの様子を見る事の出来る場があるからだ。さらに、良い指導者というものは、様々な知識や過去のノウハウを持っている。そしてその結果、的確な指示を出す事ができるのだ。また、そんな指導者は部活動のメンバーからの信用も厚く団結力も高まっていく。
中小企業において、各個人が効率よく仕事を行うには、常に正確な指示に従って仕事をこなしていく必要がある。つまり部下を持ち指示を出す人間は、どんな時でも的確な指示を出さなくてはならないのだ。しかし正確な情報を持っていなくては、的確な指示など出せるはずがない。自分の部下の仕事内容、状況をしっかり把握しておく必要がある。そのために必要な事は、報告、連絡、相談の徹底である。積極的にミーティングの場を設けるなど、情報を共有するための場を用意するための取り組みが必要だ。また、指示を出す側の人間も十分な経験、知識を持っている必要がある。そういった人材の育成も今後重要な課題といえるだろう。
吹奏楽部の活動において、他の部活動との大きな違いは、お客様が目の前にいるという事だ。つまり、お客様のリアクションを肌で感じる事が出来るのだ。良い演奏をすれば、それなりのリアクションを得る事が出来きる。私が在学中にも、良い演奏を提供した結果、スタンディングオベーションをいただいたことがある。その歓声は何よりもうれしかった。演奏の終了後に「良かったよ」とか「感動した」などと声をかけていただく事もある。お客様にしてみれば、何気ないことなのかも知れないが、提供する側としては、その何気ないリアクションのひとつひとつが、とてもうれしかったりする。そしてもっと良いものを提供しようという向上心が生まれ、より努力をする。この繰り返しこそが、より良いものを提供するための必要な事ではないだろうか。
先日、私がはじめて仕事で実際に使用するソフトウェアを作成した際、そのソフトウェアを使用する方に「本当に助かる。ありがとう」と言っていただけた。たった一言の感謝の言葉でも、私は、作って良かったと思ったし、これからももっと良いものを作っていこうと思った。
自分の行った仕事が、結果的に誰のための仕事で、誰が喜んでくれているのか、それを意識できるだけでも、作業の質も仕事のやりがいも変わってくる。お客さまと仕事をする人との距離をもっと縮めて、お客さまの声をより近くで感じる事が出来れば、より高い意識で仕事に臨むことができるだろう。インターネットが普及している現在では、ホームページを利用したり、また社内報を有効に活用するなど、お客さまと作業者との風通しを良くする取り組みが必要である。
時代の変化にともない、中小企業は生き残りをかけて、新たな顧客の獲得や、新技術の開発などに躍起になっている。しかし、そんな現代だからこそ、人や組織体制など企業において一番基本的な部分の見直しが必要である。どんな事業に取り組むのであっても、実際に仕事をするのは人であるし、人を動かすのは組織である。あたりまえのことを確実に実行し、社員が高い意識で仕事に臨む、これこそが企業が将来生き残っていくためのひとつの姿だと、私は考える。だからこそ、これからの企業を支えていく立場にある我々若い世代の人間は、仕事、企業というものに対し本気で考え、取り組んでいかなくてはならないのである。